「もうすぐクリスマスだね、望美?」


望美の肩に手を回しながら、ヒノエは微笑む。


「知ってたんだ?」


「恋人達の行事だぜ。知らないはずがないだろ?」


軽くウインクを飛ばし、再び言葉を紡ぐ。


「望美、クリスマスは俺に任せなよ」






      可愛い姫君のためにとっておきの夜を用意するから、さ。






真っ赤になる望美を横目に、ヒノエは何かをたくらんでいるような笑みを見せた。














My Princess














「…で、なんでこうなってるわけ?」


ヒノエは不機嫌そうに眉をつり上げ、辺りを見回す。






ケーキに、美味しそうな料理に…そして、横には愛しい姫君。

足りないものはないのだが、明らかにこの状況は望んでいたものではない。

大人数でのクリスマスパーティー。

あれよこれよという間に、いつの間にかこういう状況になっていた。






「ヒノエがいけないんですよ。望美さんを独り占めしよう、なんて考えるから…」


ねぇ、九郎…と、弁慶はにっこりと満面の笑顔を見せる。


「な…なんで俺なんだ!?」


「ふふふ…」


なんともいえない弁慶の笑顔を無視し、ヒノエは隣の望美に視線を移す。


「本当…とても美味しいわ」


「でしょ? 譲くんの得意料理なんだよ」


隣に座る朔と、楽しそうに会話をする望美。


望美が楽しいならそれでいいか…と、
そう思おうとしたのだが、段々と胃がムカムカしてくる。






自分はこれほど子供だったのか。






そう思うと自分に腹が立つ。


「ヒノエくん…?」


「酔ったかな…少し外に出てくるよ」


心配そうな望美をよそに、ヒノエは席を立ち、家を後にした。














-----------------------------------------------------------------------------














夜の公演はとても静かで、ヒノエはブランコに腰掛けて空を眺めていた。

あちらの世界に比べ、この世界は夜もとても明るくて…星もあまり見えない。

街のいろいろな所に灯があって、車とかいう自動で動く箱もある。






望美は、ここで育ったのだ。






久しぶりにこの世界に戻ってきた望美。

育った故郷で過ごすクリスマスなのだから、望美も楽しみに決まっている。

二人きりで過ごしたい      というのも、自分の勝手な願いだとわかっていた。






だが。






「ヒノエくん…っ」


「望美…!?」


目の前に現れた望美に驚いて、ヒノエは言葉を失う。


「…追いかけてきちゃった」


えへ…と微笑むと、望美はヒノエの横のブランコに腰掛けた。


「懐かしいなぁ、この公園。よく将臣くんたちと遊んだんだよ」


「幼馴染…だったな」


「うん。大きくなってからは、全然遊ばなくなっちゃったんだけどね」


どこか寂しそうに笑む望美にどこか締め付けられるようで、ヒノエは目をそらした。


「…ごめんね。せっかくヒノエくんが予定立てるって言ってたのに…」


ぼそりと、望美は呟く。


「姫君のせいじゃないさ。どう考えても、弁慶が企てたんだからね」


弁慶は、望美とヒノエの関係を知っていてわざとああいった計画を立てていたのだ。


全く…とため息をつくヒノエに、望美は俯いた。


「…一緒いたいって思ってるのは、ヒノエくんだけじゃないからね」


「望美?」


「皆とパーティーするのは楽しいよ。
こんな機会、これから先はもうないかもしれないし…。でも…」






      そこにはヒノエくんがいないと意味がないから。






皆、いつ元の世界に戻ってしまうのかわからない。

共に戦ってきた仲間たちだから、一緒にいられるのはとても楽しかった。

だが、一番一緒にいて欲しい人はここにいる。






いつの間にか望美の瞳はヒノエをまっすぐと捕らえていた。


まっすぐと、真剣な瞳。


その言葉が嬉しくて、ヒノエはいつものように悪戯気に微笑んだ。


「なかなか大胆な告白をしてくれるね、姫君?」


「え…?」


ヒノエは立ち上がり、望美の目の前に立つ。


なんとなく、望美もつられて立ち上がった。


「さて、これからどうしようか?」


「どうしよう…って、皆のところに戻らないの?」


「せっかく二人きりになれたんだぜ? …わかるだろ?」


きょとんとしている望美の耳元に唇を寄せ、そっと囁く。






     夜はまだまだこれからだぜ、オレの愛しい神子姫様?






ヒノエは冷えてしまった望美の身体を抱き締め、そして。


その桜色の唇に甘いキスを落とした。










熱く、甘く、聖夜は更けていく              














野外チュー!(笑)
いや、ヒノエは初創作ですね(笑)
どんなしゃべりだったかなぁ?と思い出しながらやってたので、かなりエセヒノエです(死)
とりあえず、『姫君』連呼させとこうと思いまして(最低…笑)
マジで難しいですね!うん。
なんか嫉妬した可愛いヒノエを書きたかったんです!(笑)

















「…帰ってこないな」


ケーキを頬張りながら、敦盛はぼそりと呟く。


「…せっかくぱーてーを開いてくれたのだ、お前も楽しむと良い」


「…はい、リズ先生」


にっこりと微笑みながら、敦盛は再びケーキを口に運ぶ。










恋人たち(?)に、ハッピーメリークリスマス。



















リズ敦ぢゃないですよ!(死)
なんか残された人のこと書こうと思ったら、玄武になって、そしたらこんなんなって…以下略。


















↑お気に召しましたら、ポチっとお願いしますv